2026.08.23 / ぶち上げインタビュー

【経営者インタビュー】「死ぬ前に、自分に惚れ惚れしながら死にたい」——社員の9割が"元芸人"。動画で「何度だって立ち上がれる社会」をつくる、株式会社フラワーズロマンス・中道正彦さん

「死ぬ前に、自分に惚れ惚れしながら死にたい」——社員の9割が"元芸人"。動画で「何度だって立ち上がれる社会」をつくる、株式会社フラワーズロマンス・中道正彦さん

「社員の9割が芸人の、変な会社をやってます」。 そう笑って自己紹介するのが、SNS運用代行・動画マーケティングを手がけるフラワーズロマンスの代表、中道正彦(なかみち まさひこ)さんだ。ショート動画やYouTubeを軸に、芸人・元芸人を起用した動画制作を武器に、企業の採用と集客を支援している。 鹿児島の端っこで「面白いこと」を考えていた少年。中学2年から続けた新聞配達。大阪の印刷工場で見た、ある先輩の涙。そこから飛び込んだ、月収5万円・十二年におよぶ芸人の下積み。しかし、子どもを授かったことをきっかけに舞台を降りたとき、彼の手元に残っていたのは「経営者になるしか、自分の市場価値はない」という覚悟

この記事の要点

  • 01採用に効かせたい企業さん、集客を伸ばしたい企業さん、そのどちらにも動画でアプローチしていく、という形ですね。
  • 02家族に起業家がいたわけでもないし、スポーツも卓球やサッカーを少しやったくらいで、ガッツリ運動していたわけでもない。
  • 03それなら、経営者になるしか自分の市場価値はないんだなと思って、起業しました。

※ 人生ぶち上げch編集部が本文をもとに整理した独自の要約です。

「社員の9割が芸人」——AIには真似できない"属人性"という武器

——まずは、いまの事業内容を教えてください。

中道さん:基本的にはSNSの運用代行会社です。ショート動画であったり、YouTubeであったり、動画マーケティングの事業を行っています。

採用に効かせたい企業さん、集客を伸ばしたい企業さん、そのどちらにも動画でアプローチしていく、という形ですね。

「変な会社をやってます」

——社員の9割が芸人、と伺いました。それが強みになっているんですね。

中道さん:そうですね。いまはAIで台本づくりやリサーチも、ある程度はできるようになっていると思うんです。でも、うちの強みはもう属人性なんですよ。

カメラの前で喋るのって、みなさん慣れていないと思うんですね。そこに芸人が撮影に行って、アイスブレイクして、本来の笑顔を引き出しながら、それを動画に反映していく。そこが強みだと思っています。

——ネタづくりで培ったスキルも活きていると。

中道さん:どういうワードを使ったらどういうコメントが来るだろう、どういう文章構成にしたら最終的にどういう感情に着地するだろう。そこをずっと訓練してきたので、それをそのまま台本化できるんです。演出も同じで、人の感情が動く見せ方をつくるのが得意ですね。


鹿児島の端っこで、面白いことを考える少年

——子どもの頃は、どんなご性格でしたか。

中道さん:割と、おとなしいタイプだったのかなと思いますね。クラスの中でも、人気者の集団というよりは、ちょっと端っこで面白いことを考えている、みたいなタイプでした。

出身は鹿児島県です。家族に起業家がいたわけでもないし、スポーツも卓球やサッカーを少しやったくらいで、ガッツリ運動していたわけでもない。学力も、そこまで秀でてはいなかったですね。

朝5時、40軒の新聞配達

——アルバイトはされていましたか。

中道さん:新聞配達を、中学2年くらいからしていました。朝5時に起きて、40軒くらい配っていました。月に1万3,000円とか1万5,000円とか、それくらいでしたかね。

17歳、シド・ヴィシャスに世界を教わった

——高校時代に打ち込んだことは。

中道さん:あのー、セックス・ピストルズというバンドが好きで、シド・ヴィシャスにハマりましたね。コスプレしたりもしていました(笑)。17歳のときです。

特別に秀でた何かがあったわけじゃないんですけど、「面白いもの」「変なもの」に惹かれる感覚は、この頃から変わっていないのかもしれません。


「会社に尽くすより、好きなことを」——印刷工場で見た現実

——高校卒業後は、進学ではなく就職を選ばれたんですね。

中道さん:地元の周りは、あまり進学するような環境じゃなかったんです。みんな福岡や大阪、東京か、地元で就職する。僕はたまたま都会に行きたくて、大阪にしました。

最初のキャリアは、高槻の印刷工場です。明治のカールとか、お菓子の紙パッケージをつくっていました。そこで2年ほど働きました。

——そこから「違うことをやりたい」と思うきっかけがあったと。

中道さん:45歳くらいの先輩がいて、その方が真面目に仕事に打ち込んでいたんですけど、あるときヘルニアになってしまったんです。そうしたら社内でたらい回しにされて、ちょっと邪険に扱われるようになりました。

一度、飲んでいるときに、その人が現状に対して泣いてしまったんですよね。真面目に頑張ってきても、その仕事のせいで体を壊したら邪険に扱われてしまう。それなら、会社に尽くすより、好きなことをした方がいい——そう思って、芸人になりました。

親には「美容師になる」と嘘をついて

——ご家族の反応はいかがでしたか。

中道さん:ほとんど、親には嘘をついてきましたね。「美容師になる」と言って会社を辞めて、こっそり芸人になりました。実際に打ち明けたのは、芸人になって半年くらい経ってからでした。多分、驚いたんだと思います(笑)。


月収5万円、十二年の下積み

——芸人としての生活は、どんなものでしたか。

中道さん:十二年間、コンビでやっていました。ずっときつかったんですけどね。売れていなかったので、毎日仕事があっても月収5万円くらいでした。

昼は舞台とネタ合わせ、夜は深夜のアルバイト。少し寝て、また舞台の準備とネタ合わせ。そんな生活でした。

——それでも、十二年間続けられた。

中道さん:学生時代から面白いことが好きで、ギャグ漫画が大好きだったんです。印刷工場で働いていた頃に6つ上の彼女ができて、その人が千原兄弟さんのDVDをたくさん持っていました。

僕は根暗だったので、「あ、こんな暗い芸人もいるんや」と思いました。ずっと憧れがあったんですよね。


「経営者になるしか、市場価値がない」——起業とコロナ

——芸人を辞めて、起業へと向かった経緯を教えてください。

中道さん:32、33歳で辞めたんですけど、ちょうど子どもを授かったタイミングだったんです。家族3人で生活しないといけない。

でも、印刷工場で働いていた頃は手取り11万円くらい。キャリア的にはあまり変わっていないから、いま働きに出てもまた11万円くらいなのかな、と思いました。それなら、経営者になるしか自分の市場価値はないんだなと思って、起業しました。

売上ゼロからの業態転換

——最初から、いまの動画事業だったわけではないんですね。

中道さん:2019年の創業当初は、飲食店の運営と、結婚式の二次会のプロデュース事業をしていたんです。ところがコロナで売上がゼロになってしまいました。

「じゃあ何をしよう」となったときに、映像制作会社へ業態転換しました。ただ、初めて法人営業をしなきゃいけなくて、まったく勝手がわからず、毎月赤字を垂れ流していた時期は本当に苦しかったですね。

芸人という"受け皿"をつくりたかった

——なぜ、芸人を起用する発想にたどり着いたのでしょう。

中道さん:芸人を辞めて最初に働いた「バンカラ」という飲食店に、芸人の先輩たちがめちゃくちゃ来てくれたんです。インスタライブをしてくれたりして、それで認知が広がって、店舗を黒字化できたんですね。

だから、芸人に対して恩返しをしたいという思いがありました。自分が起業するなら、元芸人のセカンドキャリアの受け皿になりたいと思ったんです。SNS運用は、ネタづくりも演出もプロデュースも、芸人時代のスキルをそのまま活かせますから。


数字が証明した、芸人起用の力

就労支援施設——「お断りの問答」を100万再生に

——具体的な成果も出ていますね。

中道さん:ある就労支援施設さんでは、月100件の問い合わせ、月商200万円アップにつながりました。

やり方はシンプルで、ターゲットの方がどんなことに悩んでいるかを分析して、その悩みを解決するノウハウを届けるんです。たとえば生活保護を受けている方が市役所で断られてしまう、その"問答"への対処法を動画にしたら、100万再生いきました。

悩みを解決して信頼される。困ったらこの人に相談したい、と思ってもらう。その積み重ねですね。

タクシー会社——19人の採用と登録者10万人

——福岡のタクシー会社さんの事例も伺いました。

中道さん:チャンネル登録者10万人、19名の採用につながりました。当時、タクシーの第二種免許の取得条件が緩和されて、実質1週間くらいで取れるようになっていたんです。でも、それが世間に知られていなかった。

そこで、免許取得のドキュメンタリーを芸人で撮ったんです。ちょうどライドシェア問題が毎日ニュースになっていて、検索から流入してきて、どんどん登録者が増えていきました。


芸人だけの会社を、どう束ねるか

月1回のランチ1on1と、お金の相談窓口

——組織づくりで取り組んでいることは。

中道さん:全従業員と、月に1回ランチ1on1をやっています。あとは、みんな芸人をやってきたので、お金のリテラシーがそこまで高くないんですよ。

だから外部のファイナンシャルプランナーさんと提携して、「通信費が高い」「保険を安くできないか」「使える公的制度はないか」といったことを相談できる制度をつくっています。芸人さんの、第二の居場所をつくるという感覚で取り組んでいますね。

教育と採用の再現性という課題

——いま抱えている課題はありますか。

中道さん:教育と採用の再現性ですね。採用した人が全員輝くわけではないので、採用の時点で見極めを間違えているのか、教育体制が整っていないのか。そこを切り分けて改善しないといけないな、と思っています。

30歳まで芸人をやってきた方は、社会経験がない状態で入ってくるので、「社会で働くってこういう感覚なんだ」というギャップはあるかもしれません。だからこそ、そこを設計し直したいんです。

——一緒に働きたいのは、どんな人ですか。

中道さん:大前提として「いいやつ」であること。そのうえで、ある程度の成功体験がある方ですね。

いい大学に受かった、運動で一定のところまでいった、M1グランプリの準々決勝までいった——何であれ、なかなか到達できないところにたどり着いた人は、壁にぶつかっても努力で解決できるんです。


「実業を持ちたい」——SNSマーケの、その先へ

——今後、挑戦したいことを教えてください。

中道さん:いまはSNSマーケティングという受託型の商売をしているんですけど、実業を持ちたいんです。

SNSマーケティングを起点に不動産をやったり、人材派遣をやったりしたいと思っています。もうすでに、そういうアクションを起こし始めています。

ミッションに掲げている「何度だって立ち上がれる社会をつくる」を、自分自身で体現したい。一度挫折して芸人という道を辞めた僕が輝くことで、同じように何かを諦めた人が入ってきて、その人を輝かせられる環境をつくりたいんです。


点は、いつか線になる——踏み出せないあなたへ

——最後に、一歩を踏み出せずにいる若い世代へメッセージを。

中道さん:僕はフラフラ生きてきたんです。芸人をやったり、飲食店をやったりしてきました。一つひとつは点に見えることが、いまつながって線になって、いまの事業になっているんですね。

計画的に、すごい物事を計算するのって難しいと思うんです。だからこそ、いまやっていることを一生懸命やれば、それはいつか線になっていく。まずは目の前のことを全力でやったらいいんじゃないかな、と思いますね。


一度は舞台を降りた男が選んだのは、逃げることでも、諦めることでもなく、「もう一度立ち上がる側」に回ることだった。点を線に変えてきた中道さんの言葉には、挫折を"終わり"ではなく"素材"に変える力が宿っている。芸人の第二の居場所は、いま確かに動画の現場で笑顔を生み続けている。


会社概要

会社名:株式会社フラワーズロマンス

代表:中道正彦

事業内容:SNS運用代行/ショート動画・YouTubeを中心とした動画マーケティング。芸人・元芸人を起用した動画制作による採用・集客支援


取材・文:佐藤大遥(株式会社One Rep)


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