2026.10.14 / ぶち上げインタビュー
【経営者インタビュー】「知は武也」——学力は小学2年生、九九も言えなかった16歳。ダンスで人生を変えた起業家。Trigger(株)代表・田中哲平さん

「僕は、努力すれば向上するということを、知らなかったんです」。 自分に才能があるとも、努力が報われるとも、思えなかった少年がいた。勉強も、運動も、友達づくりも苦手。16歳で受けた学力テストの算数は、小学2年生レベル。九九すらまともに言えなかった。 Trigger(株)の代表・田中哲平さんは、そんな地点から人生を始めている。中学卒業間際に出会った一つのブレイクダンス。独学で夜の公園に通い詰め、3年で全国コンテスト優勝。18歳で起業。ダンサーとアクセサリー販売の二軸から始めた事業は、いまや採用支援・業務設計・マーケティング支援、そして自社の物流事業へと広がった。 きっかけ一つで人生は変わる——それ
この記事の要点
- 011つ目が採用・人材の領域、2つ目が業務設計・システム開発、3つ目がマーケティング支援や事業構築の伴走支援。
- 02法人化した1年くらいで、売上も規模も人数も3倍以上に一気に伸びた時期があって、そこで採用を本気で解決した。
- 03——人生が変わったきっかけは、何だったんですか。
※ 人生ぶち上げch編集部が本文をもとに整理した独自の要約です。
「自分たちで解決したこと」を売る——4領域を貫く一本の軸
——まず、いま手がけている事業を教えてください。
田中さん:うちの会社は大きく4つに分かれています。1つ目が採用・人材の領域、2つ目が業務設計・システム開発、3つ目がマーケティング支援や事業構築の伴走支援。そこにプラスして、自社事業として物流事業を展開しています。
もともとは物流事業から始まった会社なんですけど、今のメインは物流ではなくて、企業さんの課題を解決する支援サービスの方に移ってきていますね。
——4領域と聞くと幅広いですが、共通する軸はあるんですか。
田中さん:あるんですよ。自分たちで事業を回す中でぶつかった課題を、自分たちで解決してきた。その解決したことを、そのまま他社さんに提供しているんです。
たとえば物流をやっていると、ドライバーさんの採用が必要になる。法人化した1年くらいで、売上も規模も人数も3倍以上に一気に伸びた時期があって、そこで採用を本気で解決した。その経験を、採用支援として外に出している。うちの強みって、そこなんですよね。
運営コアは10名。外部人材を活かして回す
田中さん:運営のコアな人材は10名くらいで動いています。ドライバーさんとかを含めるともっと多くなるんですけど、運営母体としては10名。外部の人材もうまく活用しながら回していくのが、うちの特徴かもしれないです。
勉強も運動も友達づくりも苦手——「努力しても無駄」だった少年時代
——子どもの頃は、どんな性格でしたか。
田中さん:もう、勉強もスポーツも苦手で、友達づくりも苦手でした。学生時代に何か結果を出した経験が、僕にはなくてですね。自分の才能を発揮できたっていう感覚が、まったくなかったんです。
勉強って、途中からやっても前の段階が分からないと、そこから抜け出せないじゃないですか。だから僕は「自分は努力しても無駄なんだ」って、ずっと思っていました。未来に対しても、ものすごく悲観的でしたね。
——16歳で学力が小学2年生レベルだった、と伺いました。
田中さん:学力テストを受けたら、算数が小学2年生レベルだったんです。九九が言えなかった。七の段が難しいとかそういう次元じゃなくて、一の段しか言えないくらいの感じでした。
行ける高校もなかったし、高校には入らない、中卒で現場で働くってずっと言っていました。僕らの世代だと、高校に行かないっていうのは、義務教育を受けてないくらいの感覚だったんですけどね。
ブレイクダンスとの出会い——「正しい努力をすれば、結果は出る」
——人生が変わったきっかけは、何だったんですか。
田中さん:15歳、中学を卒業する間際に、ブレイクダンスに出会ったんです。2つ上の兄がいて、その同級生たちがダンスをやっていた。愛知県の知多市という田舎で、距離も近くて僕も友達みたいな感じだったので、声をかけたら教えてくれて。それが始まりでした。
やってみたら、めちゃくちゃ楽しくて。ただ没頭して、たくさん練習したんです。そうしたら、どんどん上達していく。好きだからやる、やるから上達する。「正しい努力をすれば結果は出る」ということが、ものすごく分かったんですよ。それまで努力しても無駄だと思っていた僕にとって、これは大きかったですね。
夜の公園で、独学で。それでも3年で日本一
田中さん:知多市にはダンススタジオなんてなかったので、夜の公園にみんなで集まって、大事な音源を持ち寄って、自分たちで練習していました。本当に独学なんです。
それでも本気でやったら、ダンスを始めて3年で、18歳のときに全国コンテストで優勝できた。田舎の公園で独学でやってきた人間が日本一になれたっていうのは、僕の中ではすごく大きな経験でした。
高校進学、そして中退——先輩の一言が背中を押した
——一度は高校に進学されたんですよね。
田中さん:きっかけは、ダンスを教えてくれた先輩の一言でした。「中学を卒業したらどうするの」と聞かれて、「中卒で現場で働くつもり」と答えたら、「別にいいと思うけど、でもダンスは続けられなくなるね」って。
朝から晩まで働いたら、そのあとダンスなんてできない。でも高校生なら、部活をしながら勉強するのが当たり前にできる。それに気づいて、担任の先生に頼み込んだんです。先生が居残りで、僕とマンツーマンで小学校の算数から教えてくれて、なんとか入学できました。
一つ目標を作って、それに向かってちゃんとやればできるんだ、ということも、そこで分かりましたね。
——ただ、その高校は6か月で辞めています。
田中さん:そうなんです、6か月で退学しちゃって。ダンスに一生懸命時間を使えたっていうのはあるんですけど、親にはもちろん反対されました。うちの親は工場勤務の普通の親ですし、まだダンサーとしての結果も出ていない、始めて1年も経っていない状態でしたから、当然ですよね。
18歳で起業——財布の3,000円と、ギリギリのアメリカ行き
——起業の中身は、どんなものだったんですか。
田中さん:18歳でダンスインストラクターになったんですけど、インストラクターって個人事業主なんですよね。だから生活費を稼ぐために、天然石のアクセサリーや服を売る商売も始めた。ダンサーと物販の二軸でスタートしました。
——起業に必要なものは、どう揃えたんですか。
田中さん:何が必要かなと考えたら、知識・人脈・お金、みたいに3つ4つ出てきたんです。人脈やお金は今すぐは難しい。でも知識なら勉強すればいい。だから当時、財布に3,000円くらい入れて本屋に行って、本を買って読む。それが一番最初にやったことでした。
20歳、アメリカで撮った動画が600万回再生
田中さん:20歳のとき、チームメイト5人でアメリカに行ったんです。旅費が30〜40万必要で、僕は自分で稼がないといけないから、直前までお金がゼロで。締め切りギリギリに、たまたま高い天然石のアクセサリーが売れて、それで間に合いました。
そのアメリカで、現地のストリートパフォーマーに突然ダンスバトルを仕掛ける動画を撮って。帰国してYouTubeに上げたら、600万、700万回くらい再生されて。
そこからダンススタジオやアイドル事務所の外部顧問に入ったり、ウェブ制作やマーケティング戦略を提供したり。ウェブを使ったマーケティングを他社に提供し始めたのは、この頃からですね。
トリガーという名前——「きっかけ」を提供する会社
——会社名「トリガー」に込めた思いを教えてください。
田中さん:明確にあります。僕はダンスに人生を変えてもらった。なんでうまくいったのかと考えたら、「きっかけをつかめた」からなんですよね。
知多市ってヤンチャな子も多くて、僕がダンスを始めたら、夜の公園に30人、40人と若い子が集まって練習するようになった。ダンスをやっていなかったら、その時間で良くないことをしていたかもしれない。それが健全なことに時間を使うようになって、みんな真面目に働いて家族を持って、っていうふうに変わっていったんです。
人生を変えるには、きっかけが絶対に必要だ。だからそのきっかけを提供したい、という理念が先にあって、「トリガー」という名前も自然に決まりました。
理念ありきの会社だから、事業領域そのものにはこだわらない。事業内容にあまりこだわりがないのは、そういう理由です。
第一章・第二章、そして第三章へ
田中さん:2015年にトリガーを立ち上げて、11年になります。最初はエンタメ系をやりながら物流に参入した、自社で事業を回していた時期が第一章。
その中で自分たちが解決したことを他社に提供し始めたのが第二章。採用支援もマーケティングもシステム開発も、全部そうです。
そして今が、11年の歩みを一度整理して、一つの形に再定義する第三章。ブランディングを全面的にリニューアルしている、ちょうどその真っ最中です。
いまの課題は「営業」——属人化から仕組みへ
——年間3,000人もの求人応募を集めていると伺いました。
田中さん:そうですね、物流のドライバー採用を自分たちで解決してきた延長で、そこは強くなりました。お客さまも、物流の同業種や、建設系など近い業種の会社さんが多いです。
——一方で、いま抱えている課題はありますか。
田中さん:一番は営業ですね。これまでは紹介やリファラルを中心に仕事が生まれてきたこともあり、営業については他の領域ほど仕組み化してきませんでした。マーケティングやサービス設計はかなり仕組みで回している一方、営業にはまだ属人的な部分が残っています。
なので、営業領域まで仕組みとして構築するのが課題です。
見据える未来——「きっかけを提供できる企業」を増やす
——今後、事業をどう広げていきたいですか。
田中さん:形は変わっても、「きっかけの提供」という理念は変わりません。ただ、フェーズが一つ変わるなと思っているところがあって。
今までは、僕たちが直接お客さまにきっかけを提供しようと意気込んでやってきた。でもこれからは、きっかけを提供できる企業さんを作っていくことに注力したい。
自分たちがきっかけを提供する、から、きっかけを提供できる企業を増やしていく。今はそこを見ていますね。
読者へ——「知は武也」。武器を、どう使うか
——挑戦したいのに一歩踏み出せない人へ、メッセージをお願いします。
田中さん:うちの会社にはスローガンとして「知は武也」という言葉を掲げています。知識は武器だ、という意味です。
僕がダンスで人生を変えられたのは、「努力すれば向上する」ということを知らなかった僕が、それを知ることができたから。選択肢が多くあること、知っていること自体が、まず優位性になる。知識がないと、そもそも土俵にすら乗れないんです。
ただ、この言葉にはもう一つ意味があって。知識は武器になるけれど、逆に言えば武器にしかならない。大事なのは、それをどう使うかの方なんです。
これから挑戦しようという人は、これまでの経験の中で自分なりの知識を持っているはず。その知識を、どう使うか——戦略や設計の部分。その両方を大事にできているかが、結果に出る気がしています。
学力は小学2年生、行ける高校もなかった少年が、たった一つのきっかけで人生を変え、いまは他者にきっかけを提供する側に立っている。田中さんの言葉には、才能や環境ではなく「知って、動く」ことが人を変えるのだという、揺るがない実感が宿っていた。次の一歩を踏み出せずにいる誰かにとって、この記事がひとつのトリガーになるかもしれない。
会社概要
会社名:Trigger(株)
設立:2019年1月(創業:2015年)
代表:田中 哲平
所在地:〒460-0011 愛知県名古屋市中区大須1-26-3 3F05
事業内容:採用支援・人材支援、業務設計・システム開発、マーケティング支援・事業構築の伴走支援、および自社事業としての物流事業
URL:https://www.trigger-ltd.com/
取材・文:佐藤大遥(株式会社One Rep)
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