2026.10.14 / ぶち上げインタビュー
【経営者インタビュー】「1再生で、1受注・1採用」が最強——数字に踊らされないSNS運用で、中小企業を勝たせる。株式会社OMOSHIRO PROJECT・福井雄一郎さん

フォロワー数や再生回数という「わかりやすい数字」に振り回される企業が増えるなか、あえてそこを追わない経営者がいる。 大阪出身の福井雄一郎さんは、2013年にフラッシュモブの事業化にいち早く取り組み、2016年からは企業のYouTube運用支援を開始した。広告は一切打たず 、完全紹介制のみで累計100社以上を支援。現在は36社と定期契約を結ぶ。コロナ禍でフラッシュモブの売上が9割以上失われる危機を経験しながらも、追い風に転じたYouTube事業で乗り越えてきた。 今回は、大阪の商売人一家に生まれた少年時代から、フラッシュモブ事業の立ち上げ、そして「お客さんを勝たせる」という経営哲学まで、じっくり
この記事の要点
- 01「お前が大きくなる頃にはもう、うちの家、商売としては成り立ってないから、なんかやるなら自分で考えとけよ」 実際、パソコンの普及とともに町の文房具店の売上は年々下がっていった。
- 02フラッシュモブを続けるなかで、経営者から「採用にも使えないか」と相談されることが増えていった。
- 03以前はすべての企画・運用を福井さん一人で担っていたが、2024年から半年をかけて組織化を進め、業務を任せられる体制を整えたことで売上は倍増した。
※ 人生ぶち上げch編集部が本文をもとに整理した独自の要約です。
完全紹介制、広告費ゼロで100社以上を支援
福井さんが手がけるのは、企業向けのSNS・YouTube運用支援だ。特徴は、営業活動も広告出稿も一切行わない完全紹介制であること。
「信用できる人からの紹介か、パートナーからの紹介か。僕と直接つながっているかどう
か。そうでなければ仕事はお受けしないんです。だからうち、広告は一切打ってなくて」
支援実績は累計100社以上。現在は36社と定期的な運用契約を結ぶ。くら寿司や高級車の正規ディーラーなど、6年近い付き合いになる企業も少なくない。
商売人一家で育った少年時代——父から告げられた「独立採算制」
福井さんの実家は、大阪で地元でも知られた大きな文房具店を営んでいた。親戚の8割が自営業という家系で育ち、「サラリーマンを知らない」まま幼少期を過ごす。小学4年生の頃には店番を、中学に入ると在庫管理も任されていた。
転機となったのは、父から言われたある言葉だ。
「お前が大きくなる頃にはもう、うちの家、商売としては成り立ってないから、なんかやるなら自分で考えとけよ」
実際、パソコンの普及とともに町の文房具店の売上は年々下がっていった。
高校入学と同時に、父からは「うちは独立採算制です」「義務教育は終わりました」と告げられる。学費も携帯代もアルバイトで自分で稼ぐ生活が始まった。大学卒業後は東京の中小企業向けコンサルティング会社に新卒入社したが、「数字は上げてたけど、仕事の仕方がアカン」と評され、2年で会社を離れることになる。
フラッシュモブの事業化
——原体験は小学6年生のテレビ番組
コンサル会社に在職中、副業として独学で作った恋愛相談メソッドが月10万円の副収入を生んだ。その評判から結婚相談所向けの受講プログラムを企画すると、開始3ヶ月で800万円、半年で累計2000万円を売り上げるまでになる。退職後、大阪に戻った福井さんが本格的に始めたのが、フラッシュモブの事業化だった。原体験は小学6年生の頃、テレビ番組「世界まる見え!テレビ特捜部」で見たフラッシュモブ 。高校時代にそれがプロポーズで使われているのを見て「商売にできそう」と直感した。
「間違いなく、商売として始めたのは僕らが日本で最初だと思っています」
文房具店の在庫と固定費の重さを間近で見てきた経験から、「在庫を抱えず 、人を笑顔にできる仕事」を志向したのも大きい。YouTubeに動画を上げるとそこから問い合わせが殺到し、最盛期には年間300本のフラッシュモブを全国で手がけた。
リップダブから始まった、企業向け動画運用への転換
フラッシュモブを続けるなかで、経営者から「採用にも使えないか」と相談されることが増えていった。しかし福井さんは、フラッシュモブが持つライブ感や当事者性は採用動画には向かないと考えていた。
「社員が突然踊り出す会社に入りたいかというと、僕自身はちょっと違うなと思うんです」
代わりに着目したのが、当時アメリカの大学で流行していた「リップダブ(Lip Dub)」という手法だ。音楽に合わせて社員がワンカットの口パク映像をつなげていく企画で、事業内容を説明せずに会社の雰囲気だけを伝えられる。この手法は代理店を通じて評判が広がり、毎年恒例で新入社員に撮らせる企業も現れた。
2015年にクライアントから「もっと採用動画を活用したいが何か面白いものはないか?」と問われて、YouTubeの企業利用に着目。福井さんはトップ層からこれから伸びそうな層まで25のYouTubeチャンネルを徹底的にベンチマークし、原理原則を見出したうえで、2016年に正式にサービス化した。当時はYouTuberに対して「下品」「ブランディングが下がる」という否定的なイメージが根強く、営業には苦労したという。
コロナ禍、フラッシュモブの売上が9割以上減少
最も厳しかったのは、新型コロナウイルスの流行だ。結婚式が軒並み中止となり、フラッシュモブの売上は年間3000万円強からわずか180万円へと、9割以上が消えた。
しかし同時に、外出できない人々が一斉にYouTubeを始めるという「追い風」も吹いた。
YouTubeやらなあかんやん、という風が来たんです。そのタイミングで僕らはそれなりに実績があったので、いろんなところからお声がけをいただいて、逆風やと思ってパッと後ろを向いたら、追い風やったこの経験から、事業の柱を複数持つことの重要性を痛感したという。
「1再生で、1受注・1採用」——数字に踊らされない本質論
福井さんが繰り返し語るのが、フォロワー数や再生回数という「わかりやすい数字」への警鐘だ。
「僕がいつも究極やと言っているのは、1再生で1受注・1採用。再生数は10やけど採用できました、って最高でしょ」象徴的な事例が、大阪で店舗内装工事を手がける工務店だ。チャンネル登録者はわずか1600人、平均再生回数は150回ほど。それでも社長と事務員だけの小さな会社が、開始1年目で3000万円、2年目で6000万円、3年目には1億円に迫る売上をYouTubeから生み出している。
「ターゲットのパイを考えないといけない。近畿二府四県で店舗内装工事を検討している
人は、計算したら大体10万人。その1%をファンにできれば勝てるんです」
戦略設計の勝利だった。誰もが知る大手企業であっても、同じ落とし穴にはまることがある。くら寿司がYouTubeに参入した当初、半年経っても登録者は900人ほど。福井さんははっきりと進言した。
「もっとちゃんと、くら寿司そのものをやれよと思って。裏側とか、なぜ美味しいのか、どういう品質管理をしてるのか。そこを面白おかしく見せる。企業紹介動画にしちゃダメなんです」
自社の商品やこだわりという、いちばん強い資産を語らずに「会社の説明」をしてしまう。この助言の後、同社のチャンネルは軌道に乗った。
「商売はうまいけど、金儲けは下手」——お金を目的にしない経営
福井さんが大切にしているのは、大阪商人の家系で自然と培われた価値観だ。
「損して得取れと明確に教えられたわけじゃないけど、世のため人のため、誰かを笑顔に
するために動いたら、自分もそうなれる」
「お前は商売を考えんのはうまいけど、金儲けはほんま下手くそやな」とよく言われるというが、それでいいと考えている。
「お金って、感謝の気持ちが形になって返ってくるものなんですよ。ありがとうの言葉じゃ飯は食えへんから、その対価がお金なんです」
お金を目的にした瞬間に言動は見透かされる、というのが福井さんの持論だ。
36社から100社へ、そして次の構想
現在は業務委託メンバーの提案を受け、36社の定期運用を100社まで拡大する計画を進めている。以前はすべての企画・運用を福井さん一人で担っていたが、2024年から半年をかけて組織化を進め、業務を任せられる体制を整えたことで売上は倍増した。
同時に、以前から温めていた4つの新規事業も並行して立ち上げる計画だ。加えて、クライアントが発注先の実力を客観的に見極められるような「クライアントファースト」なSNS業界団体や、経験や知識を無償で若い世代に伝えるコミュニティの構想も語る。
「日本のこれからの子どもたちのために、稼ぎきった上の世代がしっかり経験を伝えてあげてほしいんです」
「挑戦」は、一兆以上戦うこと——読者へのメッセージ
一歩を踏み出せない読者へ。福井さんは、漢字の成り立ちを引きながら語る。
「『挑戦』の『挑』は、手偏に"一兆"の『兆』。そこに『戦う』と書くでしょ。つまり、一兆以上の手を考えて戦えということなんですよ。『失敗』は『失う』に『敗ける』と書くけど、あれは
負けをなくすために必要な経験なんです」「みんな情報収集しすぎなんです。いろんな情報を見すぎてやる気がなくなって、頭でっかちになって足を踏み出せない。事業が失敗したくらいじゃ死なない。やりたいことには素直に、まっすぐ向かったらいいんです」。
会社名:株式会社OMOSHIRO PROJECT
代表:福井雄一郎
事業内容:企業向けSNS・YouTube運用支援(完全紹介制)、フラッシュモブ企画運営
創業:2013年(法人設立:2016年)
取材・文:佐藤大遥(株式会社One Rep)
#経営者インタビュー#SNS運用#YouTube活用#フラッシュモブ#中小企業支援#大阪#人生ぶち上げch
この会社が気になったら
この会社に興味があります
読み込み中…



