2026.08.27 / ぶち上げインタビュー
【経営者インタビュー】ドラフト候補から19歳で起業。 100人超の中から選ばれた付き人を経て、 日本一を目指す23歳テーラーの挑戦。福岡莉空さん

福岡莉空さんは、東京・丸の内に本社を構えるA-StarOne International株式会社で、オーダースーツブランド「NOAH」のテーラーとして活動する23歳だ。 19歳でオーダースーツ事業を立ち上げ、月商200万円を達成。20歳のときには、100名を超える候補者の中から、同社代表・坂本大地氏の付き人に選ばれた。さらに、最短7営業日でオーダースーツを仕立てる独自の生産・発注・管理システム「SMATECH(スマテック)」の取扱認定を、当時最年少で取得。現在はスーツ販売部署を任され、イタリア・ナポリのラグジュアリーブランド「ARISTON」の国内販売実績日本一を目指している。 その原点にある
この記事の要点
- 01人は経験を重ねるたびに、価値観も目指す未来も変わります。
- 02福岡さん: 起業した当初は、正直に言えば、目先の売上や収入を追いかけていた部分もありました。
- 03自分が坂本代表の姿を見て、「この人のようになりたい」と行動を起こしたように、今度は自分が若い世代にとって、挑戦するきっかけを与えられる存在になる。
※ 人生ぶち上げch編集部が本文をもとに整理した独自の要約です。
ARISTONで日本一を目指す
——まず、現在のお仕事について教えてください。
福岡さん: A-StarOne Internationalで、オーダースーツブランド「NOAH」のテーラーとして活動しています。
特に力を入れているのが、イタリア・ナポリのラグジュアリーブランド「ARISTON」です。発色の美しさや柔らかな風合いに加え、着る人の個性を引き出せる生地だと感じています。だからこそ、ただ販売数を伸ばすのではなく、一人ひとりの人生や勝負の場面にふさわしい一着を届けた先で、「ARISTONの販売実績日本一」を実現したいと考えています。
自分自身、オーダースーツと出会ったことで、身なりだけでなく、仕事への向き合い方や人生そのものが変わりました。今度は、自分が仕立てる一着を通して、誰かが前を向くきっかけをつくりたい。そして、若い世代にとってオーダースーツをもっと身近な存在にし、「自分もオーダースーツの仕事に挑戦したい」と思ってもらえるような存在になりたいと考えています。
原点——捕手の防具に憧れた少年
小学1年生から始まった、13年間の野球人生
——幼少期は、どのような少年でしたか?
福岡さん: 埼玉県加須市で生まれ育ちました。兄の影響で小学1年生から野球を始め、当時、読売ジャイアンツで活躍していた阿部慎之助選手のキャッチャー防具に憧れて、捕手の道を選びました。最初は純粋に「格好いい」という気持ちでしたね(笑)。
野球にはすぐに夢中になりました。小学生の頃には地域の選抜チームでキャプテンを任せていただき、中学では副キャプテンとして関東大会に出場するなど、比較的順調に結果を残せていたと思います。ただ、その成功体験は、高校に入って大きく覆されることになりました。
初めてぶつかった大きな壁——強豪校で突きつけられた「二番手」という現実
悔しさ以上に、応援してくれる人への申し訳なさがあった
——高校進学後、大きな壁に直面したそうですね。
福岡さん: 群馬県の強豪校にスカウトしていただき、期待を持って進学しました。ところが、同じ捕手のポジションには、全国大会3位の実績を持つ選手がいた。そこで初めて、自分との明確な実力差を突きつけられました。
それまで試合に出ることが当たり前だった自分にとって、二番手であり続ける現実は本当に苦しかったです。悔しさはもちろんありましたが、それ以上に、応援してくれている両親に結果で応えられないことが情けなく、恥ずかしいと感じていました。
ただ、環境や相手の実績を言い訳にしても、自分の立場は何も変わりません。そこで初めて、「選んだ環境でどう勝つかは、自分次第だ」と思いました。
勇気——監督室の扉を叩いた1年生
才能ではなく、課題と向き合い続けることで道を拓いた
——その状況を、どのように乗り越えたのでしょうか。
福岡さん: どうしてもレギュラーになりたくて、1年生のときに一人で監督室へ行きました。当時は、2、3年生でも自分から監督室へ足を運ぶ選手はほとんどいませんでした。それでも勇気を振り絞り、「自分はどこを直せば試合に出られますか」と直接聞いたんです。
いただいたアドバイスを持ち帰り、毎日の練習で一つずつ改善していきました。すぐに結果が出たわけではありません。辞めたいと思うことも何度もありました。それでも、自分から聞きに行った以上はやり切ろうと、愚直に積み重ねました。
積み重ねを続けるうちに、少しずつ周囲の見方も変わっていきました。そして新チームではレギュラーを掴み、4番を任せていただけるようになりました。1年生の頃の自分には、レギュラーになることも、4番を任せていただくことも想像できませんでした。
その後、県大会で優勝し、関東大会では本塁打を打ち、ドラフト候補として名前を挙げていただくところまで進むことができました。
もちろん、実績は大切です。ただ、自分にとって一番大きかったのは、「二番手からでも、課題から逃げずに積み重ねれば、状況は変えられる」と身をもって知ったことです。この経験は、今の仕事においても、自分を支える土台になっています。
転機——13年間続けた野球を手放し、19歳で起業
「なりたい自分」と、いま選んでいる道のズレ
——大学進学後、野球を続けるのではなく、起業を選んだ理由を教えてください。
福岡さん: 大学では、1年生ながら上級生とともにプレーする機会もあり、野球を続けていく道も見えていました。ただ、次第に「自分はこのまま、何を目指して生きていくのか」と考えるようになりました。
当時は漠然と「経済的に豊かになりたい」という思いがあり、その答えを探すように本を読み始めました。そこで出会ったのが、『金持ち父さん 貧乏父さん』です。
本を読んで、自分が本当に目指したいのは、敷かれた道の先にある安定ではなく、自ら価値を生み出し、「人生そのものをデザインする側」に立つことなのだと気づきました。一方で、そのときの自分がしていたのは、大学を卒業して大手企業へ就職するための準備でした。
「なりたい自分」と「いま選んでいる道」が一致していない。そのズレに気づき、「何かを変えなければならない」と思いました。
迷いがなかったわけではありません。周囲に相談すると、「大学を卒業してからでもいいのではないか」「大学を辞めるのはもったいない」「騙されているのではないか」と、何度も心配されました。
それでも、「今やらなければ一生後悔する」と思い、13年間続けた野球に区切りをつけ、19歳で大学を中退し、オーダースーツ事業を立ち上げました。野球を辞めることは、自分の過去を捨てることではなく、そこで培った覚悟や継続力を、次の舞台で証明するための決断でした。
覚悟——100人を超える候補者の中から選ばれた付き人
言葉ではなく、行動で本気を示す
——20歳のとき、坂本代表の付き人に選ばれた経緯を教えてください。
福岡さん: 坂本代表は、20歳で学生起業し、本場ロンドンのサヴィル・ロウでも経験を積まれた方です。フランスでは2つの勲章を世界最年少で受章し、現在はオーダースーツブランド「NOAH」を全国500加盟以上に展開しています。その実績と影響力は、オーダースーツ業界でも広く知られています。
ただ、自分が惹かれたのは、そうした華やかな実績だけではありません。
世界最年少で勲章を受章した一方で、その後、一時は住む場所を失い、ホームレス生活も経験されています。一般的に見れば、どん底といえる状況だったと思います。しかし、代表自身はそれをどん底だとは捉えず、歩みを止めませんでした。
そこからわずか3年でフランチャイズを200ヶ所以上へ広げ、開業数業界No.1を実現しています。どのような状況に置かれても可能性を見失わず、誰よりも行動し続ける。その姿を見て、「この人の一番近くで、仕事だけでなく、生き方そのものを学びたい」と思いました。
そんな坂本代表が付き人を募集していると知り、すぐに手を挙げました。候補者は100名以上いたと聞いています。
選考では、自分から「この数字をつくります」と目標を提示し、まずはそれを達成しました。ただ、自分の本気が最も伝わったのは、付き人に決まる前の段階で、代表の家の近くへ引っ越したことだったと思います。
選ばれてから覚悟を決めるのでは遅い。機会を掴みたいのであれば、先に自分がリスクを取り、言葉ではなく行動で意思を示すべきだと考えました。
今振り返れば、付き人に選ばれなかったとしても、引っ越しにかかった初期費用や、その後の家賃はすべて自分の負担として残ります。それでも当時は、「なれなかったらどうしよう」とは考えていませんでした。「付き人になるために、今の自分に何ができるか」だけを考え続け、その末に選んだのが、先に引っ越すという行動でした。
その姿勢を見て、「そこまでするなら」と信頼していただけたのだと思います。
そこから約1年間、正式な付き人として、代表の最も近くで仕事をさせていただきました。スーツの知識や販売技術だけでなく、経営者としての判断、人との向き合い方、時間の使い方まで、言葉だけでは学べないものを現場で吸収しました。
哲学——「OrderSuit is Art.」
一着に、歩んできた過去と向かいたい未来を映し出す
——「スーツは一人ひとりの人生を映し出す存在」という言葉が印象的でした。どのような意味が込められていますか?
福岡さん: 自分は、オーダースーツとは、過去・現在・未来を紡ぐ一着だと考えています。
人は、これまでの経験や価値観をもとに、今の自分が未来を想像して一着を選びます。サイズ、色、生地、デザイン。そのすべてに、その時の自分が表れる。だからこそ、今仕立てる一着は、今の自分にしかつくれないものだと思っています。
どのような場面で着るのか。相手にどのような印象を与えたいのか。これまでどんな道を歩み、これから何を成し遂げたいのか。そうした対話を重ねていくと、その方の価値観や生き方が、生地や色、シルエット、細部のデザインに表れてきます。
例えば、海外へ挑戦されるお客様には、渡航先の国旗を想起させる色を、ボタンの裏側など目立たない場所に取り入れる。情熱を持って社会人生活を始める新卒1年目の方には、表は誠実なネイビーで整えながら、内側に赤を忍ばせる。外から見える印象だけでなく、ご本人だけが知っている決意まで、一着の中に落とし込んでいきます。
人は経験を重ねるたびに、価値観も目指す未来も変わります。だから、今仕立てる一着と、1年後に仕立てる一着は同じにはならない。その瞬間のその人にしか選べないものを形にし、「ここでしか生まれなかった」と感じていただける一着を届けることが、テーラーとしての一番の喜びです。
袖を通した瞬間に姿勢が変わり、気持ちが整い、「この一着にふさわしい自分でありたい」と思える。自分は、スーツには人の内面や行動まで変える力があると信じています。
実績——月商200万円、最年少でのSMATECH取扱認定
数字の先にある、「任せていただく責任」
——これまでの実績と、現在の心境について聞かせてください。
福岡さん: 起業した当初は、正直に言えば、目先の売上や収入を追いかけていた部分もありました。人脈も実績もなかったので、知らない方へ自分から連絡し、必要としてくださる方がいれば全国どこへでも足を運ぶなど、とにかく動き続けました。
その積み重ねによって、起業1年目には、業界で一つの目安とされる月商200万円を達成し、優秀テーラーとして表彰していただきました。2024年には、当時最年少で「SMATECH」の取扱認定を取得しました。
ただ、経営者やアスリート、著名人の方々から一着を任せていただく機会が増えるにつれて、数字以上に大切なものが見えるようになりました。
自分が仕立てたスーツが、商談や式典、結婚式、お子様の誕生日といった、その方にとって二度と同じ形では訪れない日に着られる。その事実を考えると、この仕事は単に服を販売する仕事ではありません。お客様の大切な瞬間の一部を任せていただく仕事です。
だからこそ、一着ごとに責任を持ち、その方らしさだけでなく、その方が向かいたい未来まで表現できるスーツを仕立てたいと思っています。
展望——独立ではなく、世界を目指す組織の右腕へ
日本一は、目的ではなく使命を果たすための証明
——今後、独立やご自身のブランドを立ち上げる考えはありますか?
福岡さん: 現時点では、独立は考えていません。
19歳で事業を始めた自分がここまで来られたのは、坂本代表に出会い、最も近くで学ばせていただいた時間があったからです。だからこそ、自分一人の利益や肩書きを求めて離れるのではなく、代表が掲げる「世界を代表するオーダースーツカンパニー」というビジョンを実現する右腕になることが、今の自分の役割だと思っています。
まずは「ARISTONの販売実績日本一」を実現し、テーラーとして揺るぎない実力を証明する。そして、オーダースーツを一部の特別な人だけのものではなく、人生の節目や新たな挑戦に臨むすべての人にとって、身近な選択肢にしていきたいです。
自分が坂本代表の姿を見て、「この人のようになりたい」と行動を起こしたように、今度は自分が若い世代にとって、挑戦するきっかけを与えられる存在になる。それが、これから果たしていきたいことです。
ただ、完成された姿を見せて憧れてもらいたいわけではありません。目標に向かって泥臭く挑戦し続ける姿そのものを通じて、「自分も動いてみよう」と思ってもらえる人間になりたいです。
メッセージ——「待っていても、機会は来ない」
過去ではなく、これからの行動が人生をつくる
——最後に、一歩を踏み出せずにいる同世代へ、メッセージをお願いします。
福岡さん: 本当に掴みたいものがあるなら、自分から動くしかありません。待っているだけで、理想の環境や機会が目の前に現れることは、ほとんどないと思います。
自分も、最初から行動できる人間だったわけではありません。高校時代に監督室の扉を叩いたときも、13年間続けた野球を辞めたときも、付き人に選ばれる前に引っ越したときも、不安はありました。それでも、動いたからこそ次の景色を見ることができました。
過去の選択や結果は変えられません。しかし、「これから、どんな自分になりたいか」は、今この瞬間の行動によって変えられます。
自分もまだ、目標の途中にいます。だからこそ、言葉だけではなく、挑戦し続ける姿でそれを証明していきたい。この記事が、誰かにとって最初の一歩を踏み出すきっかけになれば嬉しいです。
会社名: A-StarOne International株式会社
設立: 2019年10月1日
代表: 坂本大地
事業内容:
・オーダースーツブランド「NOAH」の企画・運営・小売事業
・全国500加盟以上のオーダースーツFC・事業プロデュース
・オーダースーツの生産・発注・管理システム「SMATECH」の開発・運営
・国内外でのファッション・クリエイティブ事業
所在地: 東京都千代田区丸の内1-8-3 丸の内トラストタワー本館20F
取材・文: 佐藤大遥(株式会社One Rep)
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