2026.10.06 / ぶち上げインタビュー

【経営者インタビュー】「動くクッション、見たことがないでしょう」——33歳で起業、"座る"の常識を変えるエアクッション開発者。株式会社JFT JAPAN・高田和宜さん

「動くクッション、見たことがないでしょう」——33歳で起業、"座る"の常識を変えるエアクッション開発者。株式会社JFT JAPAN・高田和宜さん

「恐れることなく、どんどんチャレンジしてほしい」 そう語るのは、株式会社JFT JAPAN代表の高田和宜(たかた・かずのり)さん。エアクッションという、まだ世の中に馴染みの薄いカテゴリーに特化し、クッション製品の企画・開発・販売から大手企業へのOEM供給までを手がけている。 学生時代は野球一筋で、中学生に指導を続けた日々。理系に進み、大学では水の研究に没頭。新卒で水処理業界の大手・栗田工業へ入り、10年にわたって技術営業と設計を経験した。しかし、ある転勤の辞令をきっかけに、父の元へ。そして2023年、33歳で自らの会社を立ち上げる。 「座る」という当たり前の行為に潜む負担を、テクノロジーで軽く

この記事の要点

  • 01高田さん:いや、理由は単純で、高校で進路を選ぶときに「どっちが好きか」で選んだだけなんです(笑)。
  • 02それがきっかけで、カー用品のオーディション回があるからクッションはどうか、と声をかけていただいて。
  • 03ヤマゼンさんでは、農機具や薬剤散布機を肩にかけるときの負担軽減に、リュック用クッションを採用いただいたり。

※ 人生ぶち上げch編集部が本文をもとに整理した独自の要約です。

「動くクッション、見たことがないでしょう」——"座る"の常識を変える一枚

看板は「3Dオートエアクッション」

——まず、御社の事業を教えてください。

高田さん:うちは、エアクッションという製品に特化した会社です。

一番イメージしやすいのは、椅子に座ったり車で使ったりする四角いクッションですね。その中でも看板商品が「3Dオートエアクッション」。自動で空気が抜けたり入ったりする「オートムービング機能」を搭載していて、これが他にはない技術なんです。

ずっと座っていると、お尻には一定の圧力がかかり続けるんですよ。クッションが動くことでその圧を逃がして、位置を変えていく。血の流れを止めないので、むくみやしびれ、エコノミークラス症候群のようなことにもなりにくい。お尻の圧力を、最大約60%分散させます。

——「座面が動く」というのは、あまり聞いたことがありません。

高田さん:そうなんです。椅子の座面って、基本的には動かないですよね。

だったら、クッションのほうを動かそうと。下半身にかかる圧力を、最大限に分散させるという発想です。自動で動くクッションを見たことがある方は、ほとんどいないと思います。むくみ、しびれ、腰痛や坐骨神経痛にもアプローチできる商品になっています。

甲子園へ送り出した日々——野球が教えてくれた「人間力」

中学生に、ひたすら教えた

——学生時代は、どんなことに打ち込んでいましたか。

高田さん:ずっと野球をやっていて、学生の頃は中学生にひたすら野球を教えていました。

ありがたいことに、教えた子たちが高校に行って甲子園に出てくれたりして。野球だけじゃなくて、人間力というか、マナーみたいなところも少しずつ指導していたんです。

自分が教わってきたことを、次の世代に返していく。そこにはかなり力を入れていましたね。

「どっちが好きか」で選んだ理系——水がつないだ最初のキャリア

——理系に進んだのは、お父様の影響ですか。

高田さん:いや、理由は単純で、高校で進路を選ぶときに「どっちが好きか」で選んだだけなんです(笑)。

ただ、僕らの世代は震災の後で、就職がどうなるか不透明な時期でした。理系なら食いっぱぐれないよね、と。文系から理系には行けないけど、理系からなら文系にも行ける。そんなふうに考えて選んだ、しょうもない理由です。

——大学では、どんな研究を。

高田さん:水に関する研究、水処理をやっていました。

理系にもいろいろありますけど、水って絶対になくならない。生きていく上で必ず必要ですよね。だからまず水関係の企業に就職したいと考えて、水処理の研究室に入りました。

——新卒でも、その道に進まれた。

高田さん:はい。水処理では当時、国内トップだった栗田工業に入りました。研究していたつながりもあって。

そこで技術営業や設計を、10年ほど経験しました。

山口への転勤辞令——33歳、独立という選択

縁もゆかりもない土地へ、行くのか

——順調に見えるキャリアから、なぜ独立へ。

高田さん:10年働いて、あるとき転勤を言われたんです。行き先は山口。縁もゆかりもない土地でした。

ちょうど父からは「一緒にやろう」とずっと誘われていて。父は大手美容機器会社などのブランド統括をやっていた人で、当時は独立して自分の会社をやっていました。

それなら新しいチャレンジをしようと、2023年7月に父の会社へ入りました。

——そこから、JFT JAPANの立ち上げに。

高田さん:もともと父のところにエアクッションがあって、細々とやっていたんです。ちょうど健康・ヘルスケアが話題になり始めた時期で、「これは分けて、本気でやろう」と。

そうして2023年9月に、JFT JAPANを立ち上げました。父の会社とは同じオフィスにいますが、資本関係はまったくありません。起業したのは、33歳のときです。

「良いと思ったものが、売れるとは限らない」——商品開発の壁

トイレに、エアクッション

——商品開発は、大変なことも多いのでは。

高田さん:コストが合わない、思っていたやり方ができない、という壁は多いですね。

何より、自分が「これは皆さんの役に立つ」と思ったものが、ユーザーさんには届かないというパターンが本当に多くある。委託でやっているので、工場との交渉がうまくまとまらないこともあります。良いと思ったものが、売れるとは限らない。そこが一番、苦労するところです。

——たとえば、印象的な商品はありますか。

高田さん:トイレのエアクッションですね(笑)。

便座って陶器で冷たいし、夏場は汗でへばりついてくる。あれが気持ち悪くて。百均のタオルを敷いていたんですけど、うちのクッションで圧力を分散しながら、もう少し快適にできないかと思って作りました。

洗えるようにして繰り返し使えるので、SDGsにも節約にもなる。ヒーター機能を使わなくてよくなるから、節電にもなる。使った方からは「意外といいよね」と言っていただけます。

——介護の分野にも、つながっていったとか。

高田さん:これは出したあとに知ったんですが、介護用具で唯一、トイレのエアクッションを出している会社が一社あったんです。

ただ、介護保険が効くぶん、買うとなるとすごく高い。だったら、そこにアプローチできるんじゃないかと。今はその方向にも進んでいます。

車椅子に敷くクッションやマットレスなど、「座る」に特化した領域ですね。その牙城を少しでも崩したい、という思いで取り組んでいます。

めざまし、Peach、そしてヒカル——広がるエアクッションの世界

プロモーション費ゼロで、届いた反響

——数多くのメディアに取り上げられています。

高田さん:ありがたいことに、いろいろと。

自動では動かないタイプのエアクッションは、めざましテレビのコーナーや、Peachの機内誌でご紹介いただきました。飛行機の座席って薄くてしんどいので、あのクッションがあると快適になるんです。反響は、非常に大きかったでした。

この前は、YouTuberのヒカルさんが朝の配信で3分ほど紹介してくださって。プロモーション費もかけていないのに、急に出てきて、僕もびっくりしました。

——通販の虎にも、お父様と出演されていますね。

高田さん:もともと父が先に通販の虎に出たんです。それがきっかけで、カー用品のオーディション回があるからクッションはどうか、と声をかけていただいて。

ちょうどタイミングもよかったので、出させていただきました。

——大手企業へのOEMも手がけていると。

高田さん:はい。アパレルのサックスバーさんのグループ会社や、家電・雑貨のヤマゼンさんと、OEMの話が進んでいます。

ヤマゼンさんでは、農機具や薬剤散布機を肩にかけるときの負担軽減に、リュック用クッションを採用いただいたり。過去には、大手向けに1,000台ほどOEMさせていただいたこともあります。

販路はECが一番多いですね。あとは展示会と、紹介が半分以上を占めます。

——新しい商品のヒントは、どこから得るのですか。

高田さん:日常のストレスを探すのもありますが、TikTokショップも自社でやっていて、視聴者さんに「どんなのがあったら嬉しいですか」と直接聞くんです。

そこから出てきたのが、ペット向け。高齢の犬や猫が増えていて、人間の床ずれのように、圧力がかかりすぎて荒れてしまうことがあるそうなんです。

ペット用のクッションや、ハーネスにクッションをつけた商品を検討しています。引っ張っても、首や体に負担がかかりにくい。飼い主さんの気持ちを揺さぶるような商品にしたいですね。

Just Future Technology——社名に込めた"新しい未来"

——「JFT JAPAN」という社名の由来は。

高田さん:JFTはもともと、工場が中国向け・アメリカ向けに展開していたブランド名なんです。そこと手を組んで、日本での独占契約を結んでいます。

JFTには「Just Future Technology=新しい未来の技術」という意味を込めました。他とは違うクッションを展開していく、という意志です。

——現在は、何名でやられているのですか。

高田さん:うちは、僕一人です(笑)。

商品開発から営業、経理の入力、請求書づくりまで、全部自分でやっています。朝は7時から朝活の交流会に出て、日中はお客さんを4件ほど回って、夕方からは提案資料づくりや会計処理。

問屋さんや商社を通して売っていただく形も取りながら、いい商品説明は自分でやらないと伝わらない。そこはバランスを取りながら、全部、暇なしでやっています。

1億、そして10億へ——黒子に徹するという戦略

——今後の展望を教えてください。

高田さん:まだ売上は1億円に届かない小さな会社ですが、来年・再来年には1億、5年後には10億まで行きたいと思っています。

柱にしたいのは、OEMです。自社商品だとどうしてもプロモーション費がかかる。だから黒子に徹して、安定的に売上を伸ばしていきたい。

介護福祉の領域では、大学と組もうとしています。大学の研究にあるセンサーをエアクッションに入れることで、福祉・介護へのアプローチがしやすくなる。そういう新しい開発を進めています。自社でやるより、黒子に徹する。それが今の戦略です。

「恐れることは、何もない」——一歩を踏み出せない君へ

——最後に、一歩を踏み出せずにいる読者へメッセージを。

高田さん:僕が起業したのは、33歳のとき。もっと若い方も見ていると思いますが、恐れることなく、どんどんチャレンジしてほしいです。

自分一人でできることは、少ない。でも「こうしたい」「こういう人と繋がりたい」と言い続けると、誰かが必ず見てくれているんですよ。「それ紹介できるよ」と。サラリーマン時代と比べて、人との繋がりが一気に広がりました。

発信するから責任感が生まれて、前に進めるし、逆に楽になる。やりたいことを、言い続ける。

失敗を気にするより、まず発信する。応援してくれる人が、どんどん増えていきます。最初から、全然やり直せる。恐れずに、一緒に日本を盛り上げていける人が増えたら嬉しいです。


会社概要

会社名:株式会社JFT JAPAN

設立:2023年9月

代表:高田 和宜

事業内容:エアクッションに特化したクッション製品(3Dオートエアクッション、スクエアエアクッション、リュック用・トイレ用・車用・ペット用など)の企画・開発・販売、および大手企業へのOEM供給


取材・文:黒澤優一(株式会社One Rep)


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