コメントを「好意的」「否定的」に分類しても、次に何を撮ればよいかは決まりません。One Repの関口楽が競合調査の実演で注目したのは、視聴者が経営者のどの行動に反応しているかでした。元動画では、仕入れの回転速度や、仕事の進め方に関する反応を拾っています。

「すごい」を集計するのではなく、何がすごいと受け取られたかを読む
元動画の8分14秒以降では、コメントを見ながら、経営者のどの部分を引き出せば企画になるかを考えています。例えば仕入れの回転速度への反応には、単なる人物への好感とは異なる撮影の手がかりがあります。視聴者が関心を持ったのは、商品を仕入れて売るまでの判断や動きかもしれません。
その仮説を自社の動画へ置き換えるなら、社長に「経営で大切にしていることは何ですか」とだけ聞く企画から一段進めます。実際に判断が行われる場面へ同行し、候補を何と比較したのか、何を理由に選ばなかったのか、判断後に何を確認したのかを聞きます。
ここまで具体化して初めて、コメント分析が撮影内容へ変わります。コメントが好意的だったという報告だけでは、制作担当者は人物の笑顔を増やすべきか、作業の説明を増やすべきか判断できません。
コメントから撮影指示へ変えるとき、三つの飛躍を止める
第一に、コメントした人の属性を決めつけません。仕事の進め方を褒めた人が、転職希望者とは限りません。採用目的で使えるかは、採用面談で聞かれる疑問との共通点から検討します。
第二に、好評だった場面を再現させません。例えば即断する場面が見られていたとしても、出演者に速く決める演技を頼めば、仕事の実態を伝える密着ではなくなります。通常業務の中に同じ判断が生まれる機会があるかを確認して撮影します。
第三に、公開できない情報まで見せません。仕入れの判断を撮る場合でも、取引先名や価格の公開範囲は別に確認します。視聴者が知りたいことと、企業が公開できることをすり合わせ、説明可能な比較軸を残します。
反応が多くても、自社が答えられなければ企画にしない
コメントに需要が見えても、自社にその経験や素材がなければ、競合と同じ題材を使う理由はありません。まず自社が実務の場面を見せられるかを確認します。見せられない場合は、調査記事として紹介するか、別の企画へ切り替えます。
以下の分類表は、この判断のための補助です。分析の成果物は分類済みコメントの山ではなく、「この人物の、この場面で、この判断を撮る」という制作側が動ける企画書です。
コメントと自分の視聴体験を照合して、企画の仮説を絞る
関口楽は制作時の観察についてのX投稿で、「面白い」という感想で止めず、自分がどの言葉や場面で見続けたのかを説明する習慣を紹介しています。コメント分析でも、この視点を併用できます。
例えば、コメントには仕入れの速さへの反応があり、自分も仕入れを決める場面で手を止めたなら、共通しているのは「経営者がすごい」より「判断が見えること」かもしれません。ただし、自分と数人のコメントが一致しただけで、全視聴者の需要を確定してはいけません。
次の企画では、人物、判断する場面、比較した選択肢を分けて記載します。元動画の人物だけを自社の社長へ置き換えても、同じ場面が撮れなければ企画は成立しません。コメントの反応を根拠にした仮説を、撮影できる具体的な素材と照合する工程が必要です。

コメントの原文と担当者の解釈を分けて記録する
YouTube公式のコメント管理の案内では、フィルタ機能を使って質問や返信状況などを確認する方法が説明されています。管理画面で確認したいコメントを抽出したあと、担当者が言葉の意味と前後の文脈を1件ずつ確認します。
| 記録する欄 | 記入内容 | 間違えやすい点 |
|---|---|---|
| 元のコメント | コメントの原文と参照先 | 担当者の要約を原文として残さない |
| 関連する場面 | 動画内の時刻と出演者の発言 | 別の出演者の発言と混同しない |
| 読み取れる疑問 | 視聴者が明示的に聞いていること | 書かれていない視聴者の職業や意図を推測しない |
| 担当者の仮説 | なぜその疑問が出たと考えるか | 客観的な事実と同じ欄に書かない |
| 次の対応 | 返信、説明の補足、次回企画 | すべての疑問を新動画の企画にしようとしない |
たとえば「この会社で働きたい」というコメントがついていても、その視聴者が実際に応募したかどうかは分かりません。「欲しい」という反応も、購入した事実を示すものではありません。採用や売上への実際の影響は、応募数や問い合わせ履歴などの別の記録をもとに確かめます。
質問の内容に合わせて、コメント返信と次回動画の企画を使い分ける
以下の表は、分析方法を説明するための架空のコメント例です。実際の視聴者が投稿した文章ではありません。
| コメント例 | 読み取れる疑問 | 対応案 |
|---|---|---|
| 未経験の場合、最初は誰が教えてくれますか | 入社直後の支援体制 | 研修担当者による説明と同行場面を企画する |
| この作業は毎日発生するのでしょうか | 業務頻度 | 日常業務と例外的な仕事を分けて説明する |
| 小さい店舗でも設置できますか | 導入条件 | 必要なスペースと確認方法を実演する |
| この資料はどこで見られますか | 情報へのアクセス方法 | まず概要欄への記載やコメント返信で案内する |
担当者は、コメントの件数だけでなく、自社の事業との関連性、自社が回答できる内容か、映像で見せて説明する意味があるかを確認して優先順位を決めます。1件しか届いていない質問であっても、商談や採用面談の場で頻繁に聞かれる内容と一致していれば、次回の動画として企画を検討する理由になります。
AIを活用する場合は、分類結果をコメントの原文と照合する
AIツールは、大量のコメントを効率的に分類する補助手段として活用できます。ただし、皮肉や否定のニュアンス、返信先との関係、人物名の読み違いなどによって、文脈や意味を取り違えて判定する場合があります。また、個人情報や社外秘の情報を含むデータを扱う場合は、社内の利用規定に従ってください。
AIへ指示を出す際は、「各コメントに番号を付け、質問内容を分類し、根拠となる番号を残す。書かれていない意図は断定しない」のように指定します。出力された回答に対し、原文に書かれていないニーズや事実が付け加えられていないかを担当者が目視で確認します。
同じ人物による連続投稿や引用返信を、別々の賛同者として数えないようにすることも大切です。すべてのコメントを確認できない場合は、抽出条件と未確認の件数や範囲を分析メモに明記します。
自社の動画をどこから直すか相談する
One Repでは、目的に合う視聴者、動画に入れる情報、撮影する場面、公開後の使い道を整理したうえで、企業のYouTube制作・運用を支援しています。動画の企画・改善について相談する。
文・編集:One Rep編集部。YouTubeの公式情報と公開動画、当社で整理した企画・制作の知見をもとに構成しています。仕様の確認日:2026年10月4日。

