視聴維持率を上げるために、仕事の説明や経営者の考えを削る。その結果、テンポのよい動画にはなっても、候補者が入社後を判断できなくなることがあります。企業動画では、最後まで見られることと、必要なことが伝わることを一緒に設計する必要があります。
One Repが分けて考える「見始める理由」と「入社を考える理由」
関口楽は元動画の7分59秒以降で、まだ知られていない人物が自分の思いを語るだけでは見てもらいにくいと説明しています。そのうえで、知らない人でも興味を持つ入口、見続けられる全体構成、最後に会社への理解が深まる内容の3点を挙げています。
ここから読み取れるのは、最初から会社の理念を削除するという方針ではありません。理念を受け取る前提がまだない視聴者に、どの順序で情報を渡すかという設計です。現場の判断や人間関係を見た後なら、同じ理念の説明も、実際の行動の意味を理解する材料になります。
例えば「顧客を大切にする」という説明だけでは、会社ごとの違いが伝わりません。トラブル時に誰が何を優先したかを見せた後で、その判断と会社の方針をつなげれば、視聴者は言葉と行動を照合できます。これは編集部による構成例で、特定企業の実績ではありません。
維持率が落ちた場所を、すぐに不要な場面と決めない
離脱地点が会社説明だった場合、説明内容が不要なのか、位置が早すぎるのか、説明が抽象的なのかを分けて考えます。必要な前提がないまま制度名が並んでいたなら、場面を丸ごと削るより、実際の社員の仕事と結びつける改善が考えられます。
反対に、同じ説明が繰り返されているなら、削る判断が適しています。担当者はグラフの時刻から実際の映像へ戻り、その場面の役割を一文で説明します。役割が説明できない場面と、役割はあるが伝え方が弱い場面では、修正方法が違います。
「残す情報」と「短くする情報」を編集前に決める
採用の判断に関わる仕事内容、求める働き方、支援体制は、面白さだけで削る対象にしません。長い挨拶、重複する自己紹介、説明のないイメージ映像は、目的との関係から見直します。
編集指示には「テンポよく」だけでなく、「タイトルで約束した仕事の場面を先に見せる」「抽象的な理念の説明を、その判断が映る場面の後へ移す」と書きます。その後の維持率だけでなく、面談で仕事内容についてどのような質問が残ったかも確認します。見続けられたが誤解された動画を、成功扱いしないためです。
編集者への「テンポを上げて」を、使う場面が分かる指示へ変える
関口楽の編集指示に関するX投稿では、食事場面のテンポを上げる指示を例に、なぜその場面で演出を使うのかまで考える方法を説明しています。直前が長い語りであれば、動きのある場面へ切り替える意図が考えられます。しかし、食事だから必ず速く編集すればよいというルールではありません。
維持率の改善指示も、「3分のところを速くする」だけでは次の動画へ知見が残りません。「説明が続き、新しい判断材料が増えていないため、重複を削って作業場面へ進める」と理由を添えます。一方、社員が判断に迷う間は、その仕事の難しさを理解する材料なら残す選択があります。
修正後は、指示した速さになったかではなく、伝えたい判断が見えるかを確かめます。動画全体を一律に速くすることと、場面ごとに役割を与えることは違います。

視聴維持率と平均視聴率の違いを押さえる
視聴維持率のグラフは、動画の再生開始から終了までの各時点で、視聴がどのように継続したかを示します。一方、平均視聴率は、動画全体の長さに対して平均してどの程度まで視聴されたかを表す指標です。平均視聴率が同じ数値であっても、冒頭で大きく離脱されている動画と、中盤まで安定して視聴されている動画とでは、修正すべき場面が異なります。
YouTube公式の視聴者維持率の案内では、再生開始30秒後の視聴状況、継続して視聴が保たれた場面、巻き戻しや再視聴によって生じる山、離脱やスキップに関係する谷の4つの状態が説明されています。グラフの山は、視聴者の関心が高い場面であることだけでなく、説明を一度で理解できずに見直した可能性も考えられます。
動画の担当者は、まずYouTube Studioのアナリティクスを開き、視聴維持率の推移と該当する動画の再生時刻を照合します。動画の公開直後などでデータが処理中の場合は、その状態を記録にとどめ、データが不足している段階で判断を急がないようにします。
離脱した場面から原因の仮説を立てる
視聴維持率のグラフの形状と実際の映像から、改善に向けた仮説を整理します。
| グラフと映像の状態 | 確かめる仮説 | 次の動画で試すこと |
|---|---|---|
| 冒頭で下がり、長い会社紹介が続く | 視聴者が知りたい疑問への回答が遅いのではないか | 冒頭で動画が扱う疑問と、見せる場面を先に提示する |
| 専門用語を説明している場面で下がる | 視聴者に必要な前提知識が共有されていないのではないか | 画面に実物を提示するか、短い具体例を添える |
| 同じ説明が重複している場面で下がる | 既に出た情報が繰り返され、話が進んでいないのではないか | 重複している内容を整理し、新しい情報の展開へ進める |
| 実演の場面にグラフの山がある | 視聴者の関心が高いか、あるいは作業手順が分かりにくいのではないか | 視聴者から寄せられたコメントと映像内容を照合して判断する |
| 結論を伝えた直後から下がる | 視聴者が必要な情報を得て視聴を終了したのではないか | 次に視聴者が確認すべき情報への案内を短く添える |
この対応表は、離脱の原因を特定して断定するものではありません。動画の担当者は、該当箇所の前後の映像、出演者の発言、テロップ、音量、話題の切り替わり方を細かく確認し、視聴者が離脱した理由として最も整合性のある仮説を導きます。たとえば、音声が聞き取りにくい場面を「話題がつまらないからだ」と誤認しないよう、複数の要素を切り分けて確認します。
改善内容を記録し、次の動画で結果を検証する
動画の担当者は、検証シートなどに「冒頭が弱い」とだけ書くのではなく、「会社紹介に入る前に研修風景を映し、この動画で得られる知識を説明する」のように、具体的に変更する制作内容を記録します。
| 記録項目 | 記入する内容 |
|---|---|
| 対象 | 動画のURL、公開日、データ確認日 |
| 観察した事実 | 視聴維持率が下がった時刻と、その前後の映像内容 |
| 仮説 | どのような要因が視聴の継続を妨げたと考えるか |
| 変更 | 次の動画で変更する台本構成や説明方法 |
| 確認 | 比較対象にした動画、流入経路、検証結果、残った課題 |
構成や編集に関する複数の変更を同時に実施した場合、どの修正が維持率に好影響を与えたのか特定できないことがあります。その際は、要因を単一に絞り込めなかったという結果も含めて記録します。また、動画が最後まで視聴されたことと、問い合わせや採用応募などの事業上の行動が発生したこととは別です。動画ごとに設定した目的に応じて、視聴データの推移と事業上の成果をあわせて確認してください。
自社の動画をどこから直すか相談する
One Repでは、目的に合う視聴者、動画に入れる情報、撮影する場面、公開後の使い道を整理したうえで、企業のYouTube制作・運用を支援しています。動画の企画・改善について相談する。
文・編集:One Rep編集部。YouTubeの公式情報と公開動画、当社で整理した企画・制作の知見をもとに構成しています。仕様の確認日:2026年10月4日。

